hirokiです!どうして厚生年金支給開始年齢は男女で5年の差があるのか。

こんばんはー
年金アドバイザーのhirokiです!

今日、年金受給資格10年短縮の改正年金機能強化法案が成立しました。
よって、来年8月1日施行され、9月分の年金から支給が決定。
初回支払いは10月から。
対象者には受給に必要な書類が送られるとの事。
※年金受給資格10年に短縮(先々月の関連記事)
http://www.mag2.com/p/news/221457


では本日のメルマガですが…
今回の件はたま~に聞かれる素朴な疑問。
女性のほうが早めに年金もらえている。

さて、今までも何度も書いてきたんですが、
男性は昭和36年4月2日以降、女性は昭和41年4月2日以降厚生年金の支給開始年齢が完全に65歳からになります。
※厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)
http://www.nenkin.go.jp/yougo/kagyo/kounen-kaishi.files/kaishi.pdf


上のリンク見てもらうと気づいてもらえると思いますが、
65歳前から貰える老齢厚生年金を特別支給の老齢厚生年金と言って、
その内訳としては一階部分が定額部分という年金で、
二階部分が報酬比例部分という年金から構成されています。


65歳からは一階部分が国民年金(老齢基礎年金)で、
二階部分が報酬比例部分の老齢厚生年金という支給に変わります。


このように65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金を支給するって決まったのは昭和61年4月から。


でも60歳支給だった厚生年金をいきなり65歳にしてしまうと生活設計が狂っちゃうから、
特別に支給する老齢厚生年金として徐々に厚生年金支給開始年齢引き上げて、
65歳前に支給していた報酬比例部分とか定額部分を廃止していこうとなったんです。


まあ、今まで普通に支給開始年齢はこの生年月日ならこの年齢です~と言ってきましたが、
ちょっと意識を向けてもらうとなんだか男女で5年間の食い違いがありますよね。


気づいちゃうと、なんだか女性は優遇されてない?って思っちゃいますよね。


この差は一体何なんでしょうか。



かなり昔に遡りますが、もともと厚生年金は55歳支給でした。


ただ、男性は昭和29年の厚生年金改正時に55歳から60歳に引き上げがさっさと決まりました。
4年に1歳ずつ、昭和32年から16年にかけて60歳に引き上げた。


この昭和29年時の平均寿命は男63歳で、女は67歳程(昭和22年で平均寿命は男50歳で女は53歳)。


でも女性は55歳から厚生年金支給って事でそのまま法律は改正しませんでした。
女性のほうが平均寿命は高いけど(^^;;


昭和61年4月の年金大改正がされるまでは、
今みたいに厚生年金期間が1ヶ月でも将来の年金に反映するわけではなく、
厚生年金期間が基本的には20年以上無いと貰えない時代でした。

※注意
一応、昭和36年改正で厚生年金期間が20年に足りなくても、
共済組合期間とか国民年金期間と合わせて25年以上(共済組合期間と合わせてなら20年)とかあれば、
厚生年金納めた期間分は貰えるようにはなりました(他の年金制度期間と通算して年金が貰えるから通算年金という)。
ただし、通算されるのは各制度で1年以上の期間がある場合に限る。
例えば、厚生年金と共済組合合わせて20年以上の場合なら、
厚生年金14年、共済組合6年、国民年金1年ならそれぞれの期間分の年金が貰えるようにするもの。

厚生年金と共済組合の期間合わせて20年以上無い場合、例えば、厚生年金8年、
共済組合9年であれば、あと国民年金8年→合計25年でそれぞれの年金制度の期間分の年金が貰える。

ただし、厚生年金や共済組合は60歳からの支給。
国民年金は65歳支給。

まあ…この通算年金は、昭和61年3月以前の旧年金法時代の話なんですが、
当時は厚生年金も共済年金も国民年金も別々の制度でした。
今みたいに国民年金の上に厚生年金や共済年金が乗っかってるような形ではありませんでした。
だから厚生年金なら厚生年金期間だけで20年満たさないと厚生年金貰えないんじゃそれはあんまりだから、
他の制度と数珠繋ぎ的に通算して原則の25年以上とか満たしたら納めた期間分の年金くらいは支給しようってなったんです。
旧法は昭和61年3月31日で終わった制度ですが、経過措置として旧法の年金受給者の人って現在も割といらっしゃいますけどね(^^;;

ちなみに旧法の年金受給者かどうかを判断する時は手っ取り早く、
年金証書や年金振込通知書等に記載されている年金コードというやつを見ます。

例えば旧法の20年以上の厚生年金の老齢給付(老齢厚生年金ではなく老齢年金という)はコード0130、20年以上無い厚生年金の老齢給付(通算老齢年金)はコード0230、
国民年金はコード0120というふうに0から始まるコードになっています。
今の厚生年金からの老齢給付は老齢厚生年金が支給され、国民年金からは老齢基礎年金が支給されます。
こちらの年金コードは1150←大半の人は今はこの1150。
※年金コード(日本年金機構)
http://www.nenkin.go.jp/faq/seidozenpan/kisoban/mokuteki/20140425.files/0000018942X8Y4Abc5ek.xls


※参考
年金給付費は昭和45年時点では9,000億円くらいだったけど、
昭和51年に5兆円、昭和55年に10兆円、平成2年に24兆円、
平成12年に41兆円、平成22年に53兆円に膨れ上がっていきました。
ちなみに去年の年金給付費は56.2兆円(医療は37.5兆円、福祉その他が23.1兆円)。
去年の社会保障給付費が116.8兆円だったから年金給付費だけで半分くらいを占めてる。




さて、昭和の時代は女性は一旦寿退職するともう再就職というのはあまり無かったし、
20年以上満たすのはなかなか厳しいだろうと考えられていた時代だったので、
もし厚生年金期間を20年以上納めたなら55歳から支給という事で据え置いたんです。


でも、昭和45年から高齢化(65歳以上人口7%)が始まり、また、
昭和55年時点の平均寿命は男73歳、女78歳になり、毎年平均寿命がどんどん上がってきました。

また高齢化も進む一方だったので、当時の厚生省(今の厚生労働省)がこんなに平均寿命上がっちゃったし、
高齢化も避けられないし年金給付費もガンガン上がるし将来の現役世代の負担が重くなるばかりだから、
昭和55年改正時に支給開始年齢を60歳から65歳に上げるように改正しなければヤバいんじゃ-(。A。;)-!!という事で、
20年間かけて厚生年金を65歳に引き上げるという改正案を出したけど、
日経連や労働組合が雇用環境の整備がまだ整ってないo(`ω´ )o!という理由で反発が大きかった(まだほとんどの企業が55歳定年だったからですね)。
当時の自民党も反対。
国会にすら提出できず、よって見送り。

諸外国は大多数は65歳からって決めていたのに。

平成元年改正時にも支給開始年齢引き上げ改正案をなんとか国会に提出したけど規定は削除されて見送り。


正直、平均寿命が60歳くらいの時に出来た厚生年金の支給開始年齢を、
平成に入って既に平均寿命80歳になってる時代なのに同じ支給開始年齢というのはおかしな話しですし、
また、すぐに65歳に引き上げるっていうわけではなくて、
20年かけて少しずつ引き上げていこう!て話でしたし、
そしてその間に雇用の問題(60歳から65歳までの雇用継続とか)をなんとかしていこうという事だったのに支給開始年齢を何度も見送る事自体なんとも呑気な話です(^^;;




で、話は戻りますがとりあえず、男女差を解消する為に昭和60年改正(昭和61年4月施行)時に女性も55歳支給から60歳支給に変えようという事になりました。



昭和62年から昭和74年(平成11年)まで12年かけて、3年に1歳ずつ引き上げるという事で。
昭和62年→56歳
昭和65年(平成2年)→57歳
昭和68年(平成5年)→58歳
昭和71年(平成8年)→59歳
昭和74年(平成11年)→60歳引き上げ完了。


その間、平成6年改正時にやっと厚生年金を60歳から65歳に引き上げが認められました。

とはいえこの時は特別支給の老齢厚生年金の一階部分である定額部分をまず引き上げるというもの。


二階部分の報酬比例部分の引き上げ時期はまだ未定だった。


なんとかやっと厚生年金の引き上げが決まったものの、
平成6年支給開始年齢引き上げ改正決定時点ではまだ昭和62年から平成11年にかけて女性の厚生年金を60歳に引き上げてる最中でした。


定額部分は男性は平成13年から12年かけて3年に1歳ずつ、平成25年までに65歳まで引き上げてしまうという事にしたものの、
平成11年にやっと女性は厚生年金が60歳になってまたすぐに男性と同じ時期に厚生年金の引き上げを始めてしまうと、
それはそれで変化が激しいから平成6年から平成11年までの5年間の引き上げ期間分遅らせて引き上げるようにしたわけです。


よって、女性の厚生年金の定額部分の引き上げは男性より5年遅れて平成18年から始まり、
12年かけて3年に1歳ずつ平成30年で定額部分を65歳に持っていく事にしました(定額部分廃止)。


そして、特別支給の老齢厚生年金の二階部分である報酬比例部分の引き上げの改正は平成12年に決定しました。

男性は平成25年から平成37年までの12年にかけて3年に1歳ずつ引き上げ、
女性は平成30年から平成42年までの12年かけて3年に1歳ずつ引き上げる。

これでやっと男女共に年金の支給開始年齢は完全に65歳支給ってわけですね。


でも日本の支給開始年齢の引き上げはあまりにも遅すぎです(^^;;


少子高齢化はどんどん進み、平均寿命は80歳以上になっちゃったし、
年金財政を安定化する為に、そして将来世代の保険料負担を際限なく増加させない為にも絶対に支給開始年齢の引き上げは必要だったんです。


なお、共済組合は男女差は元々無くて55歳支給開始(50歳という時期もあった)だったんですが、
昭和60年改正時に昭和70年(平成7年)までに2年に1歳ずつ支給開始年齢を引き上げで60歳支給開始年齢に完了。
共済組合も割と早めに60歳引き上げ完了したから、厚生年金の男性の支給開始年齢と共済年金の支給開始年齢は同じ。


※追記
女性が昭和62年から平成11年にかけて厚生年金支給を55歳から60歳に引き上げたわけですが、
いきなり60歳にしたわけじゃないので女性の中には60歳前から厚生年金貰っている人がいます。

厚生年金って普通60歳以上にならないと支給されないものである!
っていうのは今じゃ常識っていえば常識なんですがそうではない人もいるので気にしておきましょう。

一応、厚生年金の女子特例といいます。


まあ、女子特例はあんましお目にかかった事はないですが時々いらっしゃるので、
60歳前から貰ってるであろう生年月日の人を列挙しておきます。

昭和7年4月1日以前生まれ→55歳支給開始。
昭和7年4月2日~昭和9年4月1日生まれ→56歳支給開始。
昭和9年4月2日~昭和11年4月1日生まれ→57歳支給開始。
昭和11年4月2日~昭和13年4月1日生まれ→58歳支給開始。
昭和13年4月2日~昭和15年4月1日生まれ→59歳支給開始。

ただし、支給開始年齢までにすでに厚生年金期間が20年以上、
または、35歳以降15年以上の厚生年金期間がある女性に限ります。

ちなみにこの35歳以降15年以上というのは、
中高齢者特例といって厚生年金独自の特例で昭和22年4月1日以前生まれの人は35歳以降15年厚生年金期間があれば20年加入したものとして年金受給権が発生する特例がある。

昭和22年4月2日~昭和26年4月1日以前生まれの人なら生年月日に応じて16年から19年に引き上げ。

男性は40歳以降に昭和22年4月2日~昭和26年4月1日以前生まれの生年月日に応じて15年~19年あれば中高齢者特例に該当する。

佐賀の年金アドバイザーhirokiの楽しく学ぶ公的年金講座

主に年金の事を中心に書いています^_^ 読者の皆様に少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。

0コメント

  • 1000 / 1000